金婚式にはまだ遠く、銀婚式は数年前に通り過ぎた。きっと26回目か27回目の記念日なんだろう。しかし回数などはあまり意味は無い。この日が記念日であることだけで充分と私は思う。 

  って事で今回もほぼかみさん主導のもとアニバーサリー・トリップに出向いた。行き先は歴女かみさんの一方的主張で熊本へ。天草を回ってお目当てのメイン・イベントは熊本城。

2月28日。この日が私たちの記念日である。この日が別の記念日の人もいるのだろう。記念日などというものは、その当事者以外の人にとってはどうでも良い、フツーの日でしかないのだが、私たちにはフツーの日ではないので何処かに行こう…となった。
同じ記念日を迎える人々にとって、きっと一緒だと思うのだが、当方も行き先を決めるのは相方である。「何処に連れて行ってくれるの?」という言葉は聞いたが、私が「じゃあ、××に行こう」と言えば十中八九却下されることだろう。それを先読みして、「好きなところで良いよ」と言ったら天草と熊本!となった。ならばと、チケットや宿泊先の手配はすべてかみさんに任せた。これまたいつものことではあるのだが。
コースは右図の通りで、熊本空港からレンタカーを借りて移動した。全走行距離はおよそ340㎞だった。
私は途中何カ所か立ち寄って行きたかったのだが、かみさんが早く初日の宿泊先でノンビリしたいというので、一カ所だけ立ち寄ることにした。延慶寺の兜梅を私は見たかったのだが、レンタカーのナビではたどり着けなかった。その代わりに素敵なもの(祇園橋)を見つけられたけど。
かみさんが何で早くお宿に行きたいのかというと、お宿が素晴らしいのだそうな。
 
空港から市内を抜け、しばらく走ると右手に海が見えてきた。島原湾だ。その向こうには山容素晴らしい雲仙岳が見える。そういえば、熊本空港に着陸する寸前には噴煙立ち上る阿蘇山も見えた。天草街道、別名タコ街道を走っていると街道沿いにタコ焼きのお店が目に付く。
天草五橋の一号橋・天門橋を渡り天草パールラインに入る。延慶寺を目指すが見つからない。その途中で上の写真(左)祇園橋を偶然見つけた。天保3年(1832年)の建造で、町山口川に架かる長さ28.6m、幅3.3mの石造桁橋(重要文化財)。祇園神社の前にあることからこの名が付けられたそうな。天草島原の乱の際には川は真っ赤に染まり、おびただしい数の死体が流れてきた、と記されていた。
かみさんが一刻も早くチェックインしたいお宿は、チェックイン・タイムが15時からとのことで、まっすぐ行くとちょっと早く着いてしまう。なので大阪城落城後この地に隠遁し庄屋となった天草陶磁でも有名な旧・上田家に立ち寄った(右上)。
お宿のことはこの後に書くとして、この天草半島には先ほどの写真の干潟や塩田、そして何と言っても迫害されたキリスト教徒にまつわる見どころが多く残る。宿泊翌日、チェックアウトして崎津のキリスト教会に向かった。この教会は礼拝堂が椅子ではなくて畳敷きになっている。訪れたときは畳が入れ替えられていて、イ草の香りが礼拝堂に満ちていた。この教会の周辺はひなびた漁村で、人々はみんな素朴で親切だった。無料駐車場の「地元の人お断り。観光客のみ利用可能」の看板がこの地の人柄を表しているようだった。
人懐っこいネコに呼ばれるように民家の前に行ったらガラス戸がガラガラと開いて、「杉ようかん、買っていかんか?」とお婆ちゃん。絶妙な客引きネコだ。天主堂拝観後に立ち寄ってひと折り購入。ワンパック2本入りで150円也。激安! 羊羹というより杉の香りする素朴なお団子のよう。
雨がポツポツと降ってきた。崎津までの海岸線の道路は、ところどころ車一台通るのがやっとの箇所が数カ所ある。しかも時にブラインドカーブのトンネルだったりするので、気を張って運転していないと途中で激細のクネクネ道路をバックしなくてならない。運転初心者は要注意道路だ。

さて、かみさんご期待のお宿にチェックインしよう。お宿の名前は“五足のくつ”。下田温泉の山肌にヴィラが点在している。
海岸線から細い山道に入っていくのだが、排気量1200CCのレンタカーはウンウン言いながらやっとこさ登った。部屋は広くて使い勝手は良いのだが、泊まったこの日は雨でヴィラからレセプションへの移動が面倒だった。源泉掛け流しの部屋風呂で24時間いつでも入浴できるのは有り難かったけど、洗髪後に2度風呂に入ろうとしたら雨が頭に降りかかる。仕方ないので傘をさして入った。その絵図、まるで漫画のよう。
館内にはキリスト教の聖歌(賛美歌?)が、厳かに流れている。私はキリスト教徒ではないので、ズ~っと流れっぱなしなのは正直閉口した。時には他の種類の音も流して欲しかった。
チェックアウト時間ぎりぎりまで五足のくつでノンビリして11時30分、先に書いた崎津キリスト教会を見て熊本市内へと戻る。今夜のお宿は熊本城真ん前の熊本ホテルキャッスル。
 
熊本に来たら馬刺しを食わんとならん。ということで事前に調べておいたお店に電話を入れるとお休み。部屋からスマホでお店を検索。ちょうどホテルの近所に評判よろしいお店「管乃屋」を発見し舌鼓。ほろ酔い加減で市内の繁華街・花畑町の銀座通りをブラブラしてホテルに戻った。
翌日は早々に熊本城見物。行幸橋を渡って左にある城彩苑に行ってガイドをお願いする。無料のシャトルバスに乗って頬当御門(ほほあてごもん)まで行く。登り道なのだ。
私は正直、お城や古民家などにはほとんど興味なし。歴史的背景などを話してもらいながら見る分にはそれなりに「ホ~!」な事もあるけれど、私にはどれもこれもがタダの古い建造物にしか見えない。まぁ、確かに熊本城は他のお城に比べて迫力はあったけれども。。
 
熊本城を出て、霊台橋に向かった。旅の特集でこの橋の写真が載っていて、是非とも見てみたいと思ったのだ。熊本城からは途中、恐竜で有名な町・御船町を抜けておよそ30数㎞、1時間。その御船町で昼食を摂り霊台橋に辿り着いたら、写真撮影のベストポイントに駐車場がある。「こりゃ気の利いたはからいだなぁ」と降りていったらカフェの専用駐車場だった。仕方ないのでコーヒーを注文してお店からしばし霊台橋を眺めていた。しかしまぁ、素晴らしい立地のカフェだ。周囲には民家があるわけでもなく、この霊台橋が無かったら商売は大変だろうと思ったけど、コーヒーはかなり美味しかったし、食事も美味しいそうだったし、近隣から食事だけで来る人もいるかもしれない。
霊台橋を後にして帰路についた。熊本空港で、「楽しかったね」とかみさん。その一言で充分の旅だった。
 
   【2015年3月記】