2004年、この島に初めて訪れた。かみさんがまだノンダイバーだったこともあって、私はダイビングもしたけど観光が主体でこのランギロアも原チャリ借りて端から端まで探索したし、タヒチ島も歩きモーレア島にも渡った。    あれから10年過ぎた2014年の年の暮れ。再びランギロアを訪れてこの島で新年を迎えた。初めてこの地に立った時のような感動は無かったし、お気に入りのお店も無くなっていたけど、やっぱりランギロアは天国のような島だった。 
     
二度目になるタヒチヌイ航空は機体も新しくなっていて、10年前に乗ったときはエコノミークラスでもまるでタヒチアン仕様かと思うほど座席が広くて、充分とは言えないまでも足をそこそこ伸ばして座れた。だから日付変更線を越えるフライトでもそんなに苦痛は感じなかったのだけど、新しい機体は普通の座席幅になっていて、タヒチ・パペーテまでの11時間を超えるフライトはやっぱりキツかった。私たちの通路隣に座った外人さんは、身長190㎝は優にあろうかという巨漢で可哀想だった。彼の体躯では腰深く座っても膝が前の背もたれにぶつかってしまうのだ。足をシートの横に投げ出していて機内サービスのワゴンに思い切りぶつけられていた。かといってビジネスクラス乗るには高すぎるよなぁ。
更に寂しいことに、食事も今ひとつだった。オンデマンドの映画は観たいものが無かったので、飲み放題のお酒をおかわりして早々に寝る体制に入った。ところがどう工夫しても足の置き場がしっくりこない。いつの間にか、かみさんのシートまで進入。あとでしっかり怒られた。 
タヒチと日本の時差は、タヒチがマイナス15時間。計算しづらければ、日本時間に5時間足して日付を前日にすればいい。今回の便は夕刻に成田を発つ。つまりその時点で現地は夜中。到着した時の事を考えれば早々に就寝した方が無難だ。
パペーテでまずは入国審査を行う。監査員4人で対応してたけど、長蛇の列は遅々として進まない。次のランギロアへの乗り継ぎまで3時間以上あるから慌てる必要は無いのだけれど、意味の無い待ち時間はやっぱりイラつくなぁ。その列の横では歓迎の歌と踊りが(右動画)。歓迎というより、並ぶ者にはひとときの暇つぶし。このリズム、まさに南国のものだ。「焦っても意味ないよ」って歌われてるようだ。
  入国審査を終えパペーテ空港の外に出て最初に気付いたのは、10年前に見かけた町中を闊歩するニワトリが、今でも車が往来する道路を歩いていたこと。こちらはニワトリを食べないのだろうか? 確かにメニューで“Chicken”の文字を見た記憶が無い。

今回一番困ったのは、タヒチヌイ航空の機内預け荷物制限が、ダイバー優遇で23㎏まではOKなのだが、あくまでもダイビング器材のみに限るというのだ。なのでカメラ機材を含むダイビング器材のキャリーが2つに、更に着替えや洗面用具、日本から着てきたコートなど入れたキャリーが余分に一個増えた。乗り継ぎのエアータヒチは条件なしで1バッグ25㎏までOKなんだがなぁ。
ランギロア空港は随分と綺麗で立派になっていた。かつての空港は木造で何も無かったのに、スナックもお土産屋も出来ていた。
宿泊は前回と同じキアオラ泊。しかし2015年4月からこのホテルは日本の星のやグループの経営になる。ある意味最後のキアオラ泊だ。聞くところによると現在の従業員は全員解雇されるらしい。
  新たに星のやグループから全てのスタッフが派遣されるらしい。今のスタッフにも優秀な人は何人もいるのだから残してあげるべきと私は思うけど、それも星野佳路社長の経営方針なのだろう。現地の人を大切にしないで上手くやっていけるのかしら? まさかスタッフ全員日本人にしちゃうのかしら? 
そのキアオラも10年前より改修されて、とても良くなっていた。
かみさんは安いビーチサイド・ヴィラを申し込んだそうだけど、プール付きのヴィラにアップグレードしてくれた。経営変わってきっと模様替えされちゃうのだろうけど、記録として古いキアオラの室内模様を残しておこうと思う。
 
私は今の(旧)キアオラのスタッフも各ヴィラも好きだ。敢えて言うならアップグレードは嬉しかったけど、プールは必要なかった。プールとはいっても泳ぐには狭すぎる。ひとかきで向こう側に行ってしまうほどで、日本の銭湯湯船よりも狭い。これだったらジャグジーの方が有り難い。  とはいえそのプールも、ダイビングやカメラ機材の塩抜きには便利だったけれど。プールサイドに設けられた東屋も、素敵ではあるけど蚊が来るので使わなかった。
キアオラは食事が今ひとつなんだけど、近くに美味しい食事を提供してくれるレストランがあるので不便ではなかった。
 
ところがそのレストラン。10年前に行って、その美味しさと手際の良さに驚いたル・カイカイも、トローリング自慢の店主がいたバイマリオも無くなっていた。お気に入りのル・カイカイは、5年ほど前に店仕舞いしたそうな。

キアオラ設備の話に戻る。
バスタブは部屋の外にあって星空を眺めながらの入浴が出来る。そこから部屋に入るとすぐがシャワールームなので使い勝手は良い。
私たちが利用したヴィラはNo.30だった。レセプションやレストラン、バーやダイビングショップの並ぶ場所には、歩いて3分ほどかかる。重い器材などを運ぶときは、スタッフがカートで運んでくれた。
ル・カイカイが無いとのことなので、どこかお勧めのレストランは無いかと聞いたらラグーン・グリルを薦めてもらった。キアオラから車で3分ほど。頼めば車で迎えに来てくれる。英語がちょっと怪しげで、ときどき何を言ってるのか分からなくなるけど、シェフ兼運転手兼ウェイターだという店主の料理は確かに美味しかった。2~3つのコース料理が日替わりで提供される。値段は高いけど(約1万円ほど)、タヒチでは普通なので諦めるしかない。10年前は無かったけれど、いまではランギロアにもワイナリーが出来たそうでワインの種類は豊富だった(フランス領だものね)。1本空けるのは無理と思ったのでグラスワインを頼んだのだけど、それは私の舌には合わなかった。みんなテラスで食べるけど、わたしは暗いところで食べるのが好きではないので室内のテーブルをお願いした。
もう一軒行ったのは宿泊も出来るジョセフィーヌの店。とても品の良い老婦人がお孫さんのような若い娘さん達と切り盛りしてた。
このお店はダイビングの項でも触れるけど、イルカたちの遊び場ティプタパスの真ん前にあって、しかもキャニオンと呼ばれる海底礁の真ん前にある。夕刻、イルカたちのジャンプをカクテル飲みながら眺め、食事が出来上がるのを待つのも楽しい。
ちなみにこちらはその日の宿泊客に出す食事と一緒の1コースのみ。なので早めの予約(当日ならお昼前に?)が必要となる。英語はこちらのお婆ちゃんの方が通じやすかった。そしてこちらのお店もちゃんとホテルまで送迎してくれる。
ランギロアには年明けの元旦まで滞在した。
いつも海外での年越しは、カウントダウンの前には酒に酔って潰れて寝てしまうのだけど、今回はプール脇のチェアで眠りつぶれた(かみさんの指示で)。なのでカウントダウン前にには目が覚めたけど、前半のダンスとカウントダウンの花火しか記録はない。
 
私が眠っている間には、ゲスト達が踊っていたらしい。私はその数日前にビヤ樽のような肝っ玉母さんに手を取られ、一緒に踊らされた。ご遠慮したかったけど、日本人はノリが悪いと思われるのも嫌なのでお相手をした。かみさんが拘っていた年明けへのカウントダウンは、私の居たプーリサイドでは聞こえず、午前0時と同時に打ち上げ花火が始まった。 「スリー!ツー!ワン!Happy New Year!」とやるカウントダウンも良いけど、ヤッパリわたし的には鐘の音と共に静かに行く年来る年が良いなぁ。しかしまぁ、底抜けに明るい島の人々の歌や笑顔と一緒に新年を迎えられるのも、それはそれで想い出深いものにはなった。そして年が明けた2015年1月1日お昼過ぎ、ランギロアを発ちパペーテに戻った。
日本だったら正月元旦と言えば町は人で溢れているけれど、パペーテの街中はひっそりと静まりかえり、ほとんどのお店がシャッターを降ろしていた。10年前に来たときは、街中のマーケットを覗いたり教会にも行ってみたりしたから、今度はもっとローカルなお店を冷やかしてみたかったのだけど、冷やかそうにもお店がどこも開いていない。
宿泊するホテル・タヒチヌイで夕食は食べられるけど、何度かこのホテルを利用したことがあるという人が「あまりお勧め出来ない」という。しかし街中のレストランは開いていない。パペーテ名物の港の公園に集まる屋台(ルロット)は数店舗営業していたけど、ここでは飲酒が禁止なのでパス。美味しいんだけどね。仕方ないので公園そばにあったビアバー・Les 3 Brasseurs でピザとビールでディナー。
 
さてダイビング。
ランギロアでのダイビングは基本的に2つのパス(水路)、ティプタパスかアバトゥールパスのどちらかを流すドリフト・ダイブ。ほとんどがティプタパスを潜るけど、ときどきアバトゥールパス(右写真のズ~っと左の方)へも遠征する。
10年前に潜ったときのダイブショップ(ブルードルフィン)は満潮時はインリーフへのドリフト、引き潮時は外洋での散策と分けていたけど、今回のショップ・トップダイブ‐バティスはほとんどドリフトだった。引き潮で外洋へと潮が流れるときでも陸地に近い箇所はインリーフへ流れていた。しかし潮の流れはとても複雑で、ガイドさんの後をちゃんと付いていかないと離ればなれになってしまう。一度、外洋上でグループとはぐれたダイバーをピックアップしたこともあった。
  外洋ではハンマーヘッドやマンタ、イルカが登場するのをひたすら待つことになるので、水深25~30㍍あたりに結構な時間を留まることになる。なのでこのショップではナイトロックスはノーチャージだった。ただしライセンスは必要。もしも無ければこのショップでの取得も可能。
タンクも15㍑と大きいのもだった。エア喰い外人さんも多いためと思われるけど、私としては重いので、小さいタンクも用意して貰えると嬉しかったのだけど。毎回50分以上は潜っていたけど、いつもイクジット後のタンクにはタップリとエアーが残った。
10年前はドリフトでインリーフの中を3㎞以上も遙かに流したこともあったけれど、いまは漁民との協定でインリーフの中までは流せなくなったらしい。インリーフにも面白いポイントはあったのに、ちょっと残念。
アバトゥールパスのあるアバトルの町はこの島一番の栄えた町。とは言っても村と言った方がいいようなところだけどスーパーもある。ガソリンスタンドも出来ていた。
キアオラの桟橋からアバトゥールパスまでは、ゾデアックと呼ばれるゴムボートで15分ほど。私はアバトゥールまで車で運んでもらったけど、かかった時間はほぼ一緒だった。
ティプタパスではイルカたちが遊んでいるけど、こちらアバトゥールでは子供たちが水遊びをし、若者たちがサーフィンをしていた。ティプタパスとは違って白い砂浜が広がり、とても綺麗な場所です。たった1本しか潜らなかったのだけど、こちらの方がパスの幅も広くて流れはティプタよりも穏やかな感じだった。ちょっとしか離れていないのに、会えるサカナもちょっと違ってた。
1本目=気温:28℃ 
      水温:29.5℃
      IN:8:47 EX=9:37 
      Max=29.7 Ave=18.8
      透明度:20~40m 快晴
2本目=気温:28℃ 
      水温:29.5℃
      IN:10:54 EX=11:59 
      Max=23.6 Ave=16.3
      透明度:10~40m 快晴
3本目=気温:28℃ 
      水温:29.5℃
      IN:14:47 EX=15:38 
      Max=28.6 Ave=14.8
      透明度:5~30m 快晴
4本目=気温:27℃ 
      水温:28.7℃
      IN:10:30 EX=11:20 
      Max=30.9 Ave=17.3
      透明度:10~40 快晴
5本目=気温:27℃ 
      水温:29.6℃
      IN:14:52 EX=15:47 
      Max=32.9 Ave=17.8
      透明度:25m 快晴
 
6本目=気温:28℃ 
      水温:29.8℃
      IN:8:56 EX=9:43 
      Max=29.6 Ave=18.0
      透明度:30m 快晴
  
7本目=気温:28℃ 
      水温:30.1℃
      IN:14:49 EX=15:39
      Max=26.6 Ave=14.6
      透明度:30m 快晴
 
8本目=気温:28℃ 
      水温:29.8℃
      IN:17:01 EX=18:00
      Max=23.9 Ave=14.3
      透明度:5~20m 快晴
  
9本目=気温:29℃ 
      水温:28.6℃
      IN:8:46 EX=9:33
      Max=32.2 Ave=19.5
      透明度:30m  快晴
 
9本目=気温:29℃ 
      水温:28.6℃
      IN:14:45 EX=15:45
      Max=28.5 Ave=18.0
      透明度:25m  快晴
(アバトゥールパス)
 
【後記】
ランギロアからの帰路、まっすぐパペーテまで飛ぶものと思い込んでいた私は途中経由したマタイバ島で降りてしまった。パペーテはこんなにローカルな空港だったかなぁ、と疑問も感じたけどローカル発着の場所はこんなだったかもしれないとそのままトコトコと空港内に入ろうとしてしまった。途中で気付いて飛行機に戻ったけれど、再搭乗を許してくれて助かった。ヘタすりゃここで降りなくちゃならない。
 
 
そんなのんびりムードが南の島の魅力だろう。「あくせくしたって意味ないよ」と朗らかな島民に教えられる。
かみさんの希望で再訪したけれど、きっと再び訪れることは無いだろうと思う。お気に入りのレストランが店仕舞いしちゃったのも残念だったけど、キアオラが星野グループの経営になってしまったのがもっと残念だ。もしも次回があるならば、今度はファカラバに行ってみよう。

もしも10年前の渡航記をご覧になりたい方がいましたらコチラから